戻る  甲府勤番風流日誌

サントリー白州蒸留所

そして小淵沢駅が山梨県の最後の駅である。現在は清里と並ぶ観光地で乗馬が盛んである。そのためNHKの大河ドラマの騎馬武者による戦闘シーンはここで撮影されている。

ここでは第1篇で「山梨のワイン」を紹介した為、ここでは隣の白州町にある「サントリー白州蒸留所」について紹介しよう。サントリー白州醸造所

長野県との国境から少し甲府よりに走るとそこはある。入り口には銅製の大きな蒸留用のポットが目印の深い森に抱かれた南アルプス甲斐駒ケ岳の麓の施設である。サントリーのウイスキーと聞くと京都山崎の醸造所を思い浮かべる方が多いであろう。コマーシャルでは「ピュアモルトウイスキー山崎」だけが放映される。ところがここ白州では「ピュアモルトウイスキー白州」を造っている。

施設を訪れると施設の中をめぐる2通りの見学ルートがある。わたしは3回とも長い約45分のコースを選択してウイスキー造りの薀蓄を蓄えた。

オーク材の樽を再生する為に中を焼く行程は見ていてなかなか迫力がある。白州の森の中に多くの貯蔵庫がありその中に入ると天井まで積み上げられた樽から蒸発するアルコール分で子供や酒に弱い方は気分が悪くなる。

この蒸発は「天使の分け前(エンゼルシェア−)」といってその貯蔵所の構造や気候条件等微妙な違いはあるが10年で樽の半分ほどにもなるものという。これにより芳醇な琥珀色の原酒ができていく。これだけ年月をかけて熟成させまた歩留まりというか蒸発するのだから美味いウイスキーは高いはずである。サントリーの場合30年ものの「」が一番高いものである(響きが全て30年ものというわけではない)。値段は確か1本8万円である。ちなみにウイスキーの場合樽で熟成をさせてビンに詰めるときに熟成を止める為その後何年たっても熟成が進むものではないという。従って後は1年以内に飲むのがいいという。

この知識はここで初めて仕入れたものではなく1996年、家族で北海道を8泊9日のキャンプしたときに訪れた余市の「ニッカウヰスキー余市工場」で聞いた話である。このときいっしょになった集団の一人が「天使は10年でかなりの量を飲むんだな。」というと「おまえなんかその量を1年で飲むだろうが。」という絶妙の突っ込みがあって一同笑いの渦に包まれたことを思い出す。

余談になるがこの日から我家において私のお小遣いは「エンゼルシェア−」と呼ばれることになった。子供と違い「稼いでいる当人がお小遣いではおかしい。」との論議からだったのであるが、妻は別の意味を見つけていた。すなわち「私のお小遣いは羽が生えて飛んでいく。」という実態を表しているというのである。反論の余地なしである。

前回ワイン造りを紹介した為、蛇足を承知で今回はウイスキー作りを紹介する。

ウイスキー作りは、原料となる二条大麦を水に5から6日浸し、デンプンを糖質に変えるアミラーゼができたところで乾燥させ発芽を止め、麦芽ができる。麦芽を粉砕して仕込槽に入れると麦芽のデンプンがアミラーゼにより糖分に変わる。(一度、何故発芽を途中で止めるのか質問したことがある。発芽を途中で止めないとでんぷん質が残らず麦汁ができないとの答えであった。)サントリー白州醸造所

これをろ過すると甘い麦汁ができる。この麦汁は仕込みに使う水質のよさに左右されるため、コマーシャルで「南アルプスの天然水」で知られる名水の出る場所に立地している。麦汁を発酵槽に移し酵母を加えると糖分はアルコールと炭酸ガスに分解されウイスキー独特の香りができてくる。約3日でアルコール度数7%の「もろみ」ができる。もろみを大きな銅製の蒸留器に入れて約1000度で加熱して蒸留する。2度蒸留すると約70%の無色透明の液体ができる。この原酒はオークの樽に詰め貯蔵庫で永い眠りにつき樽材を通して外気を呼吸し、また樽の成分を吸収して琥珀色に色づきまろやかな香りがつき熟成が行われる。

樽ごとに個性の違うモルトウイスキーをブレンダーが調合してさらにまろやかなウイスキーに仕上げ再度樽に詰められ熟成される。これのみを使用したウイスキーがピュアモルトウイスキーという。これに対してトウモロコシなどを原料にしたグレーン原酒をブレンドしたものがブレンディッドウイスキーという。「響」や「ローヤル」、「リザーブ」がこれにあたる。これがウイスキーの工程である。

見学コースが終わると売店の奥に試飲室がありここで作られている「ピュア−モルトウイスキー白州」や「リザーブ」等を無料で試飲できる。これがまことに美味しい。ここでウイスキーを飲むと「酒はウイスキー一番だな。」等と、酒の本籍が「焼酎薩摩白波」の私も宗旨変えしたくなる。仕込みにつかった水を使うのが美味しいウイスキーの美味しい入れ方だという。それに入れた氷をタンブラーで「35回」まわすのがいいのだという。なぜ35回か・・・質問したが長年の経験上そうゆうものらしい。

ここでは例えばサントリーの最高級酒30年物の「響」は2000円出すことにより飲むことができる。一度飲んだが確かに美味い。30年という歳月が作り上げた絶妙の香りと芳醇さは絶品である。ぜひ一度試されることを勧める。

ただ、ここの入るときに受付で入場する人の数とドライバーを聞かれる。ドライバーには赤いシールが渡されそのシールがついている人には絶対にアルコールの入っているものは出してくれない。

この売店にはセンスの良い小物とここでしか手に入らないここで作られたモルトウイスキーが手に入る。当然、そこには天使のキーホルダーもある。それはキュートなかわいらしい天使ではなく、幾分ゴッツイ「大酒のみのエンジェル」という意味なのである。その隣にはウイスキー博物館がありウイスキーとサントリーの歴史を見ることができる。さらに、入り口にはロッジ風のレストランがあり、白州の深い森と野鳥のさえずりを聞きながらリーズナブルで比較的美味しい食事を楽しむことができる。


HOMER’S玉手箱 麹町ウぉーカー(麹町遊歩人) 会津見て歩記 甲府勤番風流日誌 伊奈町見聞記 鹿児島県坊津町